メットライフ生命「つづけトク終身」は、最近では珍しい積立利率変動型の終身保険です。
終身保険には貯蓄性があります。というのも、解約すると支払った保険料の一部、もしくは全額に利息が上乗せされた金額が解約返戻金として戻ってくるのですが、一般的な終身保険は契約時に
契約から何年目に解約すると、〇〇〇円の解約返戻金を受け取れます
というのが決まっています(これが積立利率固定型)。
一方で、積立利率変動型は解約返戻金が運用結果によって変わります。
契約から何年目に解約すると、最低で〇〇〇円の解約返戻金を受け取れますが、運用がうまくいけばもっと増えるかもしれません
というのが、積立利率変動型。
世の中の金利が良かったときは積立利率変動型が流行ってましたが、最近の低金利ですっかり下火。現在の主流は積立利率固定型です。積立利率変動型は絶滅の危機にあります。
しかし、積立利率変動型には
インフレに強い
というメリットがあります。
世の中の金利はインフレ傾向にあれば上がりやすくなります。積立利率は世の中の金利と連動するので、インフレ傾向が続けば解約返戻金がググっと増えます。
積立利率固定型はインフレ傾向が続いて世の中の金利が上がったとしても、積立利率が変わらないので解約返戻金は固定。インフレが傾向が続いた場合、積立利率固定型より有利になりやすいのが積立利率変動型の特徴です。
ということで、積立利率固定型の終身保険と比較すればメットライフ生命「つづけトク終身」はインフレに強いのですが、利率は契約から10年ごとにしか改定されません。もっと短いスパンで積立利率が世の中の金利に連動するのであればインフレに耐えられると言えますが、10年ごとだとちょっと微妙…。
2024年8月現在の積立利率は最低保証の0.6%なので、いま契約すると最低保証の積立利率が10年間続きます。現在の積立利率が継続すれば、他社の積立利率固定型の終身保険の方が有利でしょう。
終身保険は当たりハズレの大きい保険です。
というのも、解約返戻金の返戻率(支払った保険料に対して解約時に戻ってくるお金の割合)に各社大きな差があります。支払った保険料に+αの利息が上乗せされるお得な終身保険もあれば、大きく元本割れしてしまう終身保険もあります。元本割れしてしまう終身保険は選びたくないですよね。
終身保険の選び方のポイントは↓のリンク先に書いています。
リンク先の内容を要約すると、終身保険を選ぶ際に大切なのは以下の2点です。
まずはざっと概要を書いておきます。上記2点について、メットライフ生命「つづけトク終身」の概要と評価は以下のとおりです。
項目 | 内容 | 評価 |
30歳の月額保険料 (保険金額500万円、保険料払込期間60歳まで) |
男性:15,975円 女性:15,330円 |
C |
40歳の月額保険料 (保険金額500万円、保険料払込期間60歳まで) |
男性:23,610円 女性:22,735円 |
|
解約返戻金の返戻率 | 満期直後:85.7% (40歳男性・保険金額1000万円・60歳まで保険料支払い、積立利率0.6%前提) |
C(現状) |
他社と比較して保険料が高めですが、これは
死亡・高度障害:500万円保障
不慮の事故または所定の感染症で死亡・高度障害:2,500万円保障
身体障害:50万円~350万円(程度に応じて変わる)
といったように保障が手厚いため。
死亡・高度障害を保障するのが一般的な終身保険ですが、メットライフ生命「つづけトク終身」は不慮の事故・所定の感染症の保障が厚く、さらに身体障害も保障されるので、保険料も高めです(それにしても高いかと)。
また、上表の返戻率は最低保証の積立利率0.6%が継続した場合なのですが、いま現在の積立利率は0.6%です。このままなら大きく元本割れです。
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メットライフ生命「つづけトク終身」の基本情報
まずは基本情報を一覧にしました。他の終身保険と比較する際の手掛かりにどうぞ。
保険の種類 | 【終身保険】 ・死亡、高度障害を保障する保険です。 ・保障は一生涯続きます。 ・保険料は一生涯同じです。 ・貯蓄性があります(解約返戻金があります) |
【低解約返戻金型】 ・満期前(保険料を支払っている期間中)に解約した場合、解約返戻金は7割程度に減額されます。 ・満期を迎えると解約返戻金はドバっと上がります。 |
|
保険料を支払う期間 | 60歳まで、70歳まで、90歳まで |
保険料を支払う回数 | 月払、年払 |
保険料を支払う方法 | ・口座振替 ・クレジットカード払 |
保障される期間 | 一生涯(終身) |
終身保険の積立利率とは?
「積立利率の最低保証が0.6%だったら銀行預金より全然お得じゃん!」
と思ってしまいますが、終身保険の積立利率は銀行預金の利率と同じではありません。
銀行預金は銀行に預けたお金全額に対して利率が適用されますが、終身保険の積立利率は契約者が支払った保険料から、経費だとか保険金が差し引かれた部分にのみ適用されます。
銀行に100万円預けて利率1%だったら、1万円の利息を受け取れます。
しかし、終身保険の積立利率は支払った保険料全額に対して適用されるわけではありません。積立利率は加入者が支払った保険料から経費や契約者に支払う死亡保険金が差し引かれて、残った金額に対して適用されます。
上図だと緑色の部分が利率が適用される範囲です。預けたお金全額に対して利率が適用される銀行預金に対して、生命保険は支払った保険料から赤線(経費)、黄色線(死亡保険金)等が差し引かれた緑色の部分のみ、積立利率が適用されます。
例えば、赤線(経費)が2割、黄色線(死亡保険金)が3割だとすれば、積立利率が適用されるのは支払った保険料の5割。保険料100万円を支払っても50万円にしか積立利率は適用されません。積立利率が1%なら5千円しか受け取れないことになります。
では、支払った保険料の何割に積立利率が適用されるのか。
その割合(緑線の部分)を保険会社は開示していません。メットライフ生命にかかわらず、ほぼ全ての保険会社が開示していません。
従って、支払った保険料の何割が赤線になって、何割が黄色線になって、残った緑線がどれくらいなのかは完全にブラックボックス。悪く言えば、保険会社のさじ加減で変わります。
「積立利率〇〇%!!!」
と大々的にアピールする生命保険がありますが、積立利率だけアピールしても意味はありません。支払った保険料の何割に積立利率が適用されるか(端的に言うと、経費がどれくらいかかるか)もあわせて開示しないと無意味です。
例えば、メットライフ生命「つづけトク終身」のパンフレットによると、
・40歳男性
・保険料払込期間(満期)60歳まで
・保険金額1,000万円
・積立利率0.6%(最低保証)がずっと継続
といった前提だと、満期直後の状況は下表のとおり。
契約年数(満期年齢) | 支払った保険料総額 | 解約返戻金 | 返戻率(満期直後) |
20年(60歳) | 10,678,000円 | 9,140,000円 | 85.60% |
注目すべきは返戻率です。返戻率とは支払った保険料に対して、解約した際に受け取れる解約返戻金の割合を指します。返戻率が100%を超えれば支払った保険料より多くの解約返戻金を受け取れますし、100%未満であれば元本割れ。
上表の例だと満期直後の返戻率は85.60%しかありません。大きく元本割れです。満期を迎えてすぐに解約しても、支払った保険料全額は戻ってきません。銀行預金の利率が0.6%であれば元本割れはあり得ませんが、メットライフ生命「つづけトク終身」は積立利率0.6%程度だと大きく元本割れしてしまいます。
ということで、
「積立利率0.6%だったら銀行預金より全然お得じゃん!」
と期待してしまうと、後々がっかりします。
メットライフ生命「つづけトク終身」のメリット
他社の終身保険より有利になるかもしれない。
微妙な言い回しですが、現在主流の積立利率固定型の終身保険より有利になる可能性はあります。
冒頭書いたとおり、メットライフ生命「つづけトク終身」は積立利率変動型。積立利率変動型は世の中の金利に従って積立利率が変動するので、将来的にインフレ傾向が続いて世の中の金利が上がれば、積立利率固定型より有利になる可能性があります。
しかし、メットライフ生命「つづけトク終身」の積立利率が更新されるのは契約から10年ごと。積立利率はこちらに開示されているのですが、2024年8月現在の積立利率は最低保証の0.6%。いま契約しても0.6%が10年間続きます。仮に来年世の中の金利がドンっと上がったとしても、積立利率が更新されるのは10年後。
ということで、いま契約しても積立利率固定型の終身保険より有利とは言えません。後述しますが、現在の積立利率が継続すれば、積立利率固定型のオリックス生命「RISE(ライズ)」の方が有利。
ただし、将来的にインフレ傾向が続いて金利が上がれば
「メットライフ生命にしておいてよかった!!!」
と歓喜する可能性はあります。将来的にインフレ傾向が続き、金利が上がると固く信じるのであれば、メットライフ生命「つづけトク終身」は候補に入るかなと。
メットライフ生命「つづけトク終身」のデメリット
保険料が高い。
保険料は高めです。
保険金額500万円・保険料払込期間60歳までを条件として、円建て終身保険では最安値クラスのオリックス生命「RISE(ライズ)」と月々の保険料を比較してみます。
メットライフ生命 | オリックス生命 | |
30歳男性 | 15,975円 | 9,700円 |
30歳女性 | 15,330円 | 9,185円 |
40歳男性 | 23,610円 | 15,640円 |
40歳女性 | 22,735円 | 14,805円 |
圧倒的にメットライフ生命の方が高くなってますが、大きな要因はオリックス生命が
死亡・高度障害:500万円保障
なのに対して、メットライフ生命は
死亡・高度障害:500万円保障
不慮の事故または所定の感染症で死亡・高度障害:2,500万円保障
身体障害:50万円~350万円(程度に応じて変わる)
といったように、オリックス生命よりも保障が手厚くなっているため。具体的にはメットライフ生命「つづけトク終身」には災害死亡給付特約と傷害特約というオプションが自動セットされます。
上記の不慮の事故とは主に交通事故です。また、所定の感染症とはエボラ出血熱とかSARSとかコレラとか、現在の日本で暮らしている限りは感染する可能性がかなり低い感染症(インフルエンザが悪化して肺炎で亡くなったとかは対象外)。そもそも不慮の事故や上述した感染症で亡くなる可能性は低いですし、亡くなったからといって遺族が必要とする金額が上がるということはないでしょう。
一方で、亡くなるよりもお金がかかることもある高度障害・身体障害の保障を厚くするのは合理性がありますが、それにしても保険料は高いかなと。不慮の事故で高度障害・身体障害を負う可能性は高くありません。
シンプルに死亡・高度障害だけ保障されればよい場合は、保険料が安いオリックス生命「RISE(ライズ)」の方が良いでしょう。オリックス生命「RISE(ライズ)」も災害割増特約・傷害特約を付加すれば、不慮の事故や所定の感染症の保障額が増額されます。
解約返戻金の返戻率が高くない(積立利率0.6%が継続すれば)。
もう一度同じ表を載せますが、積立利率が最低保証0.6%を継続した場合、解約返戻金の返戻率は著しく低くなります。
・40歳男性
・保険料払込期間(満期)60歳まで
・保険金額1,000万円
・積立利率0.6%がずっと継続
契約年数(年齢) | 支払った保険料総額 | 解約返戻金 | 返戻率(満期直後) |
20年(60歳) | 10,678,000円 | 9,140,000円 | 85.60% |
満期直後の返戻率は100%を大きく割り込んでいます。元本割れです。
積立利率はこちらに開示されていますが、2024年8月現在の積立利率は0.6%。積立利率は10年毎に改定されるので、いま契約したとしても積立利率が見直されるのは10年後です。10年間は最低保証の積立利率が適用されます。
先ほど保険料を比較したオリックス生命「ライズ(RISE)」は、同条件の満期直後の返戻率が107.9%。支払った保険料より多くの解約返戻金を受け取れます。現状で有利なのはオリックス生命です。
オリックス生命「ライズ(RISE)」は積立利率固定型なので、インフレ傾向が続いて世の中の金利がドンっと上がればメットライフ生命が逆転する可能性もあります。逆に言えば、積立利率固定型はインフレに弱い。
未来がどうなるかはわからないので、どちらが良いかは一概には言えませんが、現在の低金利が長期に渡って続けばメットライフ生命が不利であることは間違いありません。
メットライフ生命「つづけトク終身」の評価
評価:B(S、A~C)
現在発売されている終身保険では珍しい積立利率変動型の終身保険です。他社の積立利率固定型の終身保険と比較してインフレに強いというメリットはありますが、現在の積立利率は最低保証の0.6%。
さらに積立利率が見直されるのは10年ごとです。いま契約しても10年間は最低保証の0.6%が適用されます。長い目で見れば積立利率固定型よりお得になる可能性もありますが、どうなるかは予測できません。確実に言えるのは、現在の低金利が続けば他社の積立利率固定型の方が有利であるということ。
また、保険料は他社より高め。不慮の事故や感染症の保障が厚いという点はメリットですが、それにしても高いかなと。シンプルに死亡・高度障害が保障されればよいという場合は、保険料が安い他社の終身保険と比較した方がよいでしょう。
現状で言えば評価は「C」かなと思いますが、積立利率変動型という他社にない特徴があるので、「B」にしました。将来的に金利が上がると信じるのであれば、他社の積立利率固定型よりも有利になる可能性はあります。
メットライフ生命「つづけトク終身」の相談をするなら。
メットライフ生命「つづけトク終身」は全国の保険ショップで相談できます。取り扱っている保険ショップは多めです。きっとご近所の保険ショップでも相談できます。
しかし、ふらっと入った保険ショップで
「うち、メットライフ生命取り扱ってないですよ」
なんて言われたら絶望です。
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保険金の不払い率をこちらにまとめていますが、不払いとなる理由の多くは
- 契約時の告知事項に不備があった。
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の2点。
1点目は保険を契約する際に生命保険会社へ知らせた告知事項(過去の病歴とか現在の健康状況とか職業等)に誤りがあったケースで、終身保険にはこれが稀にあります。
告知事項の誤りの主な原因は契約者の勘違いです。なので、保険ショップのスタッフが契約時にしっかり説明すれば回避できます。保険クリニックでしっかり説明を受けて契約すれば、まず該当することはないかと。
また、2点目はそもそも保険会社に保険金を支払う責任がないケースですが、医療保険やがん保険には責任分界点が微妙なグレーゾーンが存在します。微妙なグレーゾーンでキーになるのが医師が書く診断書。診断書の表現ひとつで保障されないこともあります。
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まとめ
公式サイト:メットライフ生命「つづけトク終身」
インフレに強い積立利率変動型の終身保険ですが、現在の積立利率は最低保証の0.6%。このままだと元本割れです。また、積立利率は10年ごとにしか見直されないので、仮に来年ドンっと金利が上がったとしても反映されるのはずっと先。
また、保険料も高めです。不慮の事故や感染症の保障が厚いという要因はありますが、それにしても高いかなと。現時点で言えば、なかなか候補には入りにくいかなと感じます。
保険クリニックはメットライフ生命と提携しています。本記事で比較対象に挙げたオリックス生命とも提携しているので、両者の比較もかんたんにやってくれますす。終身保険選びに迷ったら、手っ取り早いのは保険クリニックです。
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※2023年7月更新