ソニー生命から発売された「変額個人年金保険SOVANI」。
毎月一定額を積み立てて、積み立てた保険料は契約者が選択したファンド(特別勘定)で運用されるという仕組み。そして商品名にあるとおり「変額」なので、受け取れる年金額はファンドの運用結果によって上下します(元本割れする可能性もあり)。
個人的な感覚では、老後の生活資金を貯めるのに個人年金保険を使うメリットはあまりないかなと。個人年金保険の手数料は高いです。そして、高い手数料に見合うほどのリターンを挙げられるかも微妙。
老後の生活資金を貯めるなら、まずは確定拠出型年金(iDeco)です。手数料面でも税制面でも個人年金保険より有利なのは確定拠出型年金(iDeco)。まずは勤務先が確定拠出型年金を用意しているかを確認し、用意していなければネット証券でiDecoの口座を開くことを検討した方がよいでしょう。
既に確定拠出型年金(iDeco)を始めていて、毎月の上限額まで積み立てても余裕がある場合はNISA、それでも余裕があるリッチな方なら証券会社の特定口座でファンドを購入した方が良いかと。繰り返しますが、老後の生活資金を貯めるのに個人年金保険を使う決定的なメリットを私は思いつきません。
以下、ソニー生命「変額個人年金保険SOVANI」と確定拠出型年金(iDeco)を比較した上でのメリデメをまとめていきます。
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ソニー生命「変額個人年金保険SOVANI」のデメリット
手数料が高い。
保険で資産運用するときの最も大きなデメリットがこれです。
ソニー生命「変額個人年金保険SOVANI」のパンフレットを読むと、主な諸費用として
- ファンドに支払う信託報酬
- 保険契約の締結に要する費用(保険料の3.0%)
- 保険契約の維持などに要する費用(積立金額の年利1.2%)
が挙げられています(他に災害死亡保障に関する費用もあります)。
ファンドに支払う信託報酬はiDecoでも発生する手数料です。なのでここは両者ほぼ互角。
保険契約の締結に要する費用はSOVANI独自です。月々の保険料から3%が手数料として差し引かれます。例えば、月々の保険料が20,000円だとすれば、実際に運用に回されるのは3%の600円が差し引かれた19,400円。
ただし、これと似たような費用がiDecoにもあります。例えば、SBI証券でiDecoを始めると口座管理手数料として月237円が差し引かれます(拠出金に関わらず)。その他にもiDecoには
- 初回手数料(2,829円)
- 年金受け取り時に発生する給付事務手数料等(1回440円)
がかかります。SOVANIで支払う保険料の金額にもよりますが、
SOVANIの保険契約の締結に要する費用 VS iDecoの諸費用
という構図で見れば、両者に大きな差はないかなと。
ここまではSOVANIとiDecoに大きな差はありません。大きな差を生むのがSOVANIの保険契約の維持などに要する費用。これが積立金額に対して年利1.2%かかります。こんな費用はiDecoにはありません。
年利1.2%が継続すれば、そのインパクトはかなりデカいです。毎月2万円を優秀なファンドに積み立てて、優秀なファンドが毎年6%のリターンを挙げたとすると、複利が効いて30年後には2,009万円まで膨らみます。
しかし、6%から手数料として1.2%が差し引かれれば実質的なリターンは4.8%。年利4.8%であれば30年後には1,604万円にしかなりません。その差はおよそ400万円。
これが保険で資産運用する場合の大きなデメリットです。手数料が高過ぎます。
ちなみに、SOVANIのパンフレットには現在35歳の方が65歳までの30年間、毎月2万円を積み立てた場合、運用実績が年利6%であれば積立金額が1,898万円まで膨らんでますが、これは上述した
- ファンドに支払う信託報酬
- 保険契約の締結に要する費用(保険料の3.0%)
- 保険契約の維持などに要する費用(積立金額の年利1.2%)
を差し引いた後のリターンが6%だった想定です(2009万円にならない理由は不明)。実際にこれだけの利益を得るためには、ファンドが年利6%に加えて↑の手数料をカバーするリターンを挙げる必要があります。
税制面で不利(個人年金保険料控除が使えない)。
税制面でもiDecoと比較して不利です。
会社員の方なら年末調整で、自営業の方なら確定申告で、1年間に支払った保険料を所得控除に使えます。生命保険に関わる所得控除には
- 生命保険料控除
- 介護保険料控除
- 個人年金保険料控除
の3種類がありますが、SOVANIで支払った保険料は生命保険料控除に分類されます。個人年金保険料控除は使えません。
なので、既に別の生命保険に加入している場合は要注意。生命保険料控除を上限満額まで使い切っているのなら、SOVANIで支払った保険料は所得控除されません。
iDecoは拠出金がまるまる所得控除されます。税制面でも有利なのはiDecoです。
クレジットカード払いができない。
※2024年10月に改定があり、保険料をクレジットカードで支払うことが可能となりました。本デメリットは解消済みです。
↑の2点と比較すればささやかなデメリット。
SOVANIは月々の保険料をクレジットカードで支払うことができません。クレカ払いができればポイント還元を受けられますが、そんな恩恵もありません。
まあでも勤務先の確定拠出型年金に加入する場合は給与から天引きされるので、この点はSOVANI独自のデメリットとは言えません。個人で口座を開いてiDecoを始める場合は拠出金をクレカ払いできることが多いので、SOVANIのデメリットですね。
ソニー生命「変額個人年金保険SOVANI」のメリット
一時払できる。
SOVANIは初回一括でドンっと大金(1,000万円とか)の保険料を支払うことができます。
一括で保険料を支払えば、上述した保険契約の締結に要する費用はかかりません。手数料の面でも若干有利ですし、初回一括で保険料を支払えば、ちまちまと毎月積み立てるよりリターンが上がる可能性も高くなります。
iDecoは初回一括払いができません。毎月定額をコツコツ積み立てるのが基本ですし、他にできるのは年払いのみ。潤沢に資産がある方なら、この点はiDecoと比較した場合のメリットでしょう。
ただし、一括で支払ったとしても、SOVANIの大きなデメリットである保険契約の維持などに要する費用が消えるわけではありません。一括で支払う余裕があるのなら、まずはNISAの枠を埋めて、それでも余る場合は証券会社の特定口座でファンドを購入した方が良いかなとは感じます。
中途解約できる。
原則的にiDecoは中途解約ができません。始めてしまえば積み立てたお金を引き出せるのは最短で60歳。この点は老後の資産形成を目的とした国の政策なので、どうしようもありません。
一方で、SOVANIは中途解約できます。
「あまりお金増えないし、面白くないな」
とか、
「お給料下がって毎月保険料支払うのが厳しくなってきたな」
とか、そういう場合は中途解約できます(月々の保険料を減額することもできます)。中途解約すれば、それまでに積み立てた金額がまるまる戻ってきます。
ただし、契約から7年未満に解約した場合は解約控除費用が発生します。解約控除費用の控除率は年齢と契約からの経過期間によって変わるのですが、若い人がサクッと短期間で解約してしまうと、その控除率はけっこうえぐいです。基本的にはSOVANIも始めたら止めない(少なくとも7年は)覚悟をした方がよいでしょう。
ちなみに、中途解約する可能性がある場合もSOVANIよりNISA、もしくは証券会社の特定口座でファンドを購入した方がよいでしょう。NISAも特定口座も積み立てた金額をいつでも引き出すことができます。
死亡保障あり(ただし微妙)。
災害で亡くなった場合、災害死亡給付金として積立金額の1.1倍を受け取れます。iDecoはそれまでに積み立てた金額がそのまま一括で戻ってくるだけなので、この点はSOVANIのメリットでしょう。
ただし、なんでもかんでも亡くなったら1.1倍が戻ってくるわけではありません。1.1倍を受け取れるのは
- 不慮の事故
- 所定の感染症
で亡くなった場合です。
不慮の事故とは、主に交通事故です。そして所定の感染症はコレラとか腸チフスとかジフテリアとか、現在の日本で暮らしている限りは感染する見込みが極めて低いやつです(インフルエンザから肺炎を発症して亡くなったとかは対象外)。
ということで、この点が大きなメリットかと言えば、そうでもありません。契約途中で亡くなったとしても、災害死亡給付金を受け取れる可能性は低いでしょう。iDecoと同じく積み立てた金額がそのまま戻ってくることが多いかと。
もしかしたらリターン良いかも。
SOVANIの大きなメリットとなる可能性があるのがこの点。
冒頭書いたとおり、SOVANIは運用先のファンドを契約者が選択できます。選択肢は以下の16ファンド。
- バランス型20
- バランス型40
- バランス型60
- バランス型80
- 日本株式型TOP
- 海外株式型MSP
- 日本債券型NOP
- 海外債券型FTP
- 日本リート型TSP
- 海外リート型SPP
- 日本株式型JV
- 日本株式型JG
- 世界株式型GQ
- 世界株式型GI
- 世界債券型GQ
- マネー型
ところで、世の中の投資信託は大きく以下の2つに分けられます。
インデックスファンド:市場平均(日経平均とかS&P500)と同じくらいのリターンを目指すファンド。手数料が安い。
アクティブファンド:市場平均を上回るリターンを目指すファンド。手数料が高い。
「市場平均を上回る方がいいじゃん!アクティブファンド一択でしょ!」
と思ってしまいますが、投資のプロが運用しても長期に渡って市場平均を上回るのは難しいと言われています。結局はアクティブファンドのリターンも市場平均に収束するけど、手数料が高いのでインデックスファンドに負けるというのが通説。
ウォーレン・バフェット氏も
私のアドバイスはこの上なくシンプルだ。現金の10%を米国の短期国債に、残る90%を超低コストのS&P500のインデックスファンドに投資しなさい。ヴァンガードのファンドがいいだろう。この方針なら、高い報酬のファンドマネージャーを雇うどの年金基金、機関、個人の出す結果よりも長期にわたって良い成績を上げられると思う。
と、言ってます。投資のプロでない普通の人ならインデックスファンドがベターな選択です。
上記の16種類のファンドのうち、1~4のバランス型〇〇は世界の株式と債券に分散投資をするファンドです(〇〇の数字は株式の割合)。ディメンショナル・アイルランド・リミテッドというアイルランドの会社が運用するそうですが、どういう方針で何を目指して投資をするのか私にはよくわかりませんでした(わからないものには投資をしないのが資産運用の鉄則)。
5~10がインデックスファンドです。
iDecoでもインデックスファンドで運用できます。そしてSOVANIもiDecoもインデックスファンドのリターンは原則的に同じ(市場平均を目指すので)。なので、手数料が安いぶんリターンはiDecoの方が大きくなります。あえてSOVANIで5~10のインデックスファンドを選ぶ理由はないでしょう。
ちょっと飛ばして16のマネー型は貯金とほぼ同等。手数料がめちゃくちゃ高い定期預金です。これを選ぶのであれば、銀行で定期預金をした方がよいでしょう。
そして11~15がアクティブファンド。
上述のとおり、長期的にアクティブファンドが市場平均を上回るのは難しいと言われているので、11~15も選ぶ理由は皆無!と言い切りたいのですが、その通説をぶち破っていたのがSOVANIの前身であるソニー生命「変額個人年金保険」。
変額個人年金保険で選べるファンドに世界株式型があります。その世界株式型の設定来リターンは2023年9月末現在でベンチマーク(市場平均)よりも年換算で5%程度上回っています(運用レポートはこちら)。
このリターンを投資のプロでない人が(投資のプロでも)叩き出し続けるのは非常に難しいと感じます。変額個人年金保険は1999年から世界株式型を組み入れていますが、現在に至るまでベンチマークを上回り続けているのは驚異的。これくらいのリターンを上げ続けているのであれば、高い手数料を払う価値はあると言えます。
その世界株式型の後継にあたるのが、13の世界株式型GQです。
もちろん、これまでの運用実績が今後も続くとは限りません。通説どおり、将来的にはリターンが市場平均に収束してしまい、手数料が高いために自前でインデックスファンドを購入した場合に負ける可能性もあるでしょう。
しかし、今後も同程度のリターンを継続できると考えるのであれば、iDecoで運用するよりもSOVANIの世界株式型GQに積み立てた方が有利。SOVANIを選ぶ理由はこの点に集約されるかと。
ここらへんの感想を述べる人はたくさんいますが、断定できる人はいません(断定する人は信用できません)。自分で判断するしかない部分です。
ソニー生命「変額個人年金保険SOVANI」の評価。
評価:B(S、A~Cで判定)
ひとまずは様子見です。
個人年金保険は手数料が高過ぎます。保険会社に支払う手数料は契約者の損です。繰り返しますが、老後の資金を貯めるならまずは手数料の安いiDeco。手数料の高い個人年金保険で老後の生活資金を貯めるメリットは見当たりません。
高い手数料を支払って高いリターンを得られるのであれば個人年金保険も悪くありませんが、それはとても難しい…。個人年金保険に高い手数料を支払っても、リターンは手数料の安いiDecoと変わらない(そして手数料が高い分だけ負ける)ことが多いでしょう。
しかし、SOVANIのアクティブファンドには高い手数料に見合うリターンを挙げられる可能性があります。SOVANIの前身である変額個人年金では、世界株式型がベンチマークを年換算で5%程度上回るリターンを挙げています。SOVANIでもこのリターンが継続すると考えるのであれば、老後の生活資金を貯める手段になり得ます。
まあでもSOVANIの発売が2022年10月。評価するには時期尚早です。
評価が定まっていない個人年金保険に大切な資金を全力でぶっこむ冒険をする必要もないでしょう。よって評価はふつうの「B」としました。今後の状況によってはAにもなるし、Cにもなるかなと感じます。
いますぐ老後の生活資金を貯め始めるのなら、やっぱり手堅くiDecoでしょう。
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まとめ
公式サイト:ソニー生命「SOVANI」
手数料の高い個人年金保険で老後の生活資金を貯めるメリットはほぼないのですが、ソニー生命「SOVANI」で選べるアクティブファンドには高い手数料に見合うリターンを挙げられる可能性があります。
その可能性に賭けるならSOVANIはアリですが、評価するには時期尚早。大切な老後の生活資金は手堅くiDecoで貯めるのがベターな選択でしょう。
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※2024年10月更新 保険料がクレカ払い可能となったことを反映。