遺族年金について。

遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなったとき、その家族に支給される年金です。

遺族年金には以下の2種類があります。

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金

会社員(公務員)の経験がない自営業世帯であれば遺族基礎年金のみ受け取れるはず。会社員(公務員)の方なら、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れるでしょう。

遺族年金の受給要件

遺族基礎年金 次の1から4のいずれかの要件を満たしている方が亡くなったとき

(1)国民年金の被保険者である間に死亡したとき
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
(3)老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

遺族厚生年金 次の1から5のいずれかの要件を満たしている方が亡くなったとき

(1)厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
(2)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
(3)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
(4)老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
(5)老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

ごちゃごちゃと書いてますが、原則的には年金に加入している方が亡くなったとき、遺族に遺族年金が支給されます。

ただし、遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給要件には以下のただし書きがあります。

*****

【遺族基礎年金】
・1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

・3および4の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

【遺族厚生年金】

・1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

・4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

*****

会社員・公務員であれば給与天引きで年金保険料を支払っているので、遺族年金を受け取れない!ということはないかなと。学生時代や失業中に多少の未納期間があったとしても、「3分の2以上」が条件なので、多くの場合は救われるでしょう。

一方で、年金未納期間がある自営業世帯は遺族年金を受け取れない可能性があります。まずは年金保険料の納付状況を確認しましょう。

遺族年金の受給対象者

遺族基礎年金 (1)子のある配偶者
(2)子
遺族厚生年金 (1)妻
(2)子
(3)夫
(4)父母
(5)孫
(6)祖父母

遺族基礎年金は子のいる配偶者、もしくは子に支給されます(子がいない配偶者は対象外)。

ただし、ここで言う子は

  • 18歳になった年度の3月31日までにある方(高校生以下)
  • 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方

を指します。全ての子が高校を卒業している配偶者は対象外(障害のある20歳未満の子がいる場合は対象)。子も高校を卒業していれば対象外です。

遺族厚生年金は複雑です。

妻は子の有無に関わらず遺族厚生年金を一生涯受け取れます(ただし、子のない30歳未満の妻は5年間のみ)。

子の支給条件は遺族基礎年金と同じ。

直近で改正があり、妻が亡くなった夫にも遺族厚生年金が支給されるようになりましたが、妻が亡くなったときに55歳以上であることが条件です。しかし、原則的には支給されるのは60歳から。遺族基礎年金を受け取れる夫(子のいる夫)の場合は、60歳前でも遺族厚生年金を受け取れます。

その他、父母・孫・祖父母も遺族厚生年金を受け取れますが、優先順位は妻・子・夫よりも低く設定されています。

遺族年金の金額

遺族基礎年金 【子のいる配偶者が受け取るとき】
792,600円 + 子の加算額

【子が受け取るとき】
795,000円+2人目以降の子の加算額
(↑を子の数で割った額が、1人あたりの額)

※子の加算額は以下のとおり。
1人目および2人目の子の加算額 各228,700円
3人目以降の子の加算額 各76,200円

遺族厚生年金 死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。

※具体的な計算式は↓のA+B×3/4
A)平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
B)平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)

例えば、会社員の夫が高校生以下の2人の子どもを遺して亡くなった場合、遺族基礎年金の金額は

792,600円+228,700円×2人=1,250,000円

です。

これに遺族厚生年金が加わるのですが、上述のとおり計算式はめちゃくちゃ複雑。仮に夫が2023年8月現在45歳で亡くなり、それまでの収入が

平成15年3月までの平均標準報酬月額(月給の平均)が25万円
平成15年4月以後の平均標準報酬額(月給+賞与の平均)が40万円

とすると、

A)250,000円×7.125/1,000×56ヶ月=99,750円
B)400,000円×5.481/1,000×244ヶ月=534,945円

A+B×3/4=476,021円

が遺族厚生年金。

遺族基礎年金と遺族厚生年金を合算した1,726,021円が遺族年金の年額です。12ヶ月で割って月額にすると143,835円なので、これで子ども2人を育てるのはなかなか辛い…。

ちなみにですが、遺族厚生年金には子がいない妻を救うために中高齢寡婦加算という仕組みがあります。具体的には、以下のいずれかを満たす場合に40歳から65歳になるまでの間、596,300円(年額)が加算されます

  • 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻。
  • 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。

まとめ

遺族の生活費のベースは遺族年金です。

ただし、上述のとおり遺族年金だけでは不十分なので、それに遺された配偶者の給与を加え、それでも足りない分を民間の生命保険で補填するのが基本的な考え方。生命保険に入る前に、まずは遺族年金をどれくらい受け取れそうか計算してみましょう。

ちなみにですが、年金には

  • 長生きリスクに備える保険(老齢年金)
  • 働けなくなるリスクに備える保険(障害年金)
  • 主たる生計者が亡くなった場合の保険(遺族年金)

といった機能があります。割とオールマイティにピンチを救ってくれるのが日本の年金制度。民間の保険では実現が難しいことをやってます。金融商品としても考えても、優秀過ぎるほど優秀です。

また、年金不安を煽って寄ってくる銀行・保険会社はあまり信用しない方がよいかと。

「年金なんていくらもらえるかわかりませんよ?〇〇〇に加入しておいた方が安心ですよ?」

みたいなのを鵜吞みにするのは危険です。

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