一般的な就業不能保険は入院・在宅療養が60日を超えてから給付スタート。そして、条件を満たす限りは給付継続です。障害も保障されるので、長期の働けないリスクに備えられるというのが特徴です。
一方で、パルシステム「はたらく力」で備えられるのは短期から中期の働けないリスクのみ。入院・在宅療養が7日以上続けば給付がスタートしますが、給付日数に上限があるので長期の入院・在宅療養だと途中で保障が切れることもあります。
また、障害は保障対象外。障害を負って一生涯満足に働けないというような状況には備えられません。
その代わりに保険料が激安です。
ものの安さをたとえるのに「1日の料金はコーヒー1杯分!」といった表現がありますが(そしてそれは積み重なるとけっこう高い)、パルシステム「はたらく力」は1日換算の保険料が最安値で22円程度なので、コーヒーよりも全然安いです。驚くほど安いです。
ということで、パルシステム「はたらく力」が候補に入るのは
- 貯蓄が少なくて短期入院でも生活に支障を来たす会社員(傷病手当金があったとしても)
- 傷病手当金が給付されないフリーランス・個人事業主
- 働けなくなっても困るは自分だけ(家族はいない)
といった方になるかと。
ある程度貯蓄があって短期入院なら貯蓄の切り崩しで対応できる方や、家族がいるためにそれなりの保障額と長期の働けないリスクへの備えが必要な方は、他社の就業不能保険を検討したほうがよいでしょう。
ちなみにですが、パルシステムはかわいい牛のイメージキャラクターでおなじみの生協組合です。そのパルシステムが組合員向けに募集している就業不能保険が「はたらく力」です。
就業不能保険の選び方のポイントは↓のリンク先に書いています。
リンク先の内容を要約すると、選び方で大切なのは以下の5点です。
まずはざっと概要を書いておきます。上記5点について、パルシステム「はたらく力」の概要と評価は以下のとおりです。
項目 | 内容 | 評価 |
公的制度連動(保険会社独自の基準) | なし | C |
入院・在宅療養 | 保障あり | A |
メンタル疾患 | なし | C |
復帰後の給付継続 | なし(給付限度日数あり) | C |
年間保険料 | 3000円コース:年間7,700円 5000円コース:年間11,700円 ※性別・年齢にかかわらず同額。 |
A |
障害等級は保障条件に含まれません。治療が終われば保障も終了です。障害を負うような長期間の働けないリスクに備えることもできません。
保障されるのは入院・在宅療養です。保障条件は
①病気またはけがにより治療のために入院していること
②治療の必要から医師から絶対安静の指示を受けていること
に該当するケース(ただしメンタル疾患を除く)。7日以上続いた入院・在宅療養が保障対象です。
また、給付日数にも上限があります。
3000コース:265日まで
5000コース:160日まで
といった制限があるので、↑を超えるような長期の入院・在宅療養は保障が途切れます。がんで入退院を繰り返して長期間働けないといった状況や、脳血管疾患で半身麻痺が遺るような状況や、事故で障害を負ってしまうような状況に備えられるかは不安が残ります。
ただし、保険料は驚くほど安いです。上表のとおり性別・年齢関係なく年間7,700円から加入できます。月々にすると642円。激安です。
就業不能保険の相談は保険クリニックで!
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パルシステム「はたらく力」の保障条件評価。
死亡保険は亡くなったら保険金が支払われます。白黒ハッキリしていてわかりやすいですよね。それに対し、就業不能保険は保障条件(働けない定義)が生命保険各社バラバラです。
まずは就業不能保険で重要な「働けない定義」を評価します。
公的制度連動の条件
繰り返しますが、パルシステム「はたらく力」は障害等級・要介護認定を保障条件に含みません。
就業不能保険は障害年金・障害者手帳・要介護認定といった公的制度と連動して保障することが大半です。例えば、片腕を失って障害等級2級に認定されると、契約終了(65歳までとか)まで毎月10万円給付といった感じ。
障害を負ってしまえば、多くの職業で元のように働くことは難しいでしょう。国から障害年金が給付されますが、その額は大きくありません。こんなケースをカバーするのが就業不能保険の重要な役割なのですが、パルシステム「はたらく力」はその役割を全うできません。
この点はデメリットでしょう。
入院・在宅療養
上述した公的制度連動の保障条件は、症状が固定された後の保障です。しかし、働けない期間は症状が固定された後に限りません。症状が固定される前の治療を受けている期間もだいたい働けません。
そこを保障するのが入院・在宅療養の保障です。
パルシステム「はたらく力」は入院・在宅療養をきっちり保障します。条件は以下のとおり。
①病気またはけがにより治療のために入院していること
②治療の必要から医師から絶対安静の指示を受けていること等によりあらゆる仕事(業務)にまったく従事することができない状態
冒頭書いたとおり、入院・在宅療養が7日間継続すれば給付スタートです。一般的な就業不能保険は60日継続して給付スタート。短期の入院・在宅療養でも保障される点はメリットです。
メンタル疾患
メンタル疾患は保障対象外です。最近はメンタル疾患を保障する就業不能保険が増えてきているので、この点はデメリットでしょう。
ただし、他社の就業不能保険も
「ちょっと会社を休んでゆっくりしましょうか」
と医師に診断され、会社を休んで自宅でゆっくりしながら通院治療を受ける程度の軽いメンタル疾患は保障対象外。保障されるのは入院が必要だったり障害等級認定されるような重症に限定されることが多いです。
パルシステム「はたらく力」のメリット
保険金が激安。
保険料は激安です。
パルシステム「はたらく力」は2コースから選べます。
3000コース | 5000コース | |
給付限度日数 | 265日まで | 160日まで |
給付金 | 就業不能1日につき3,000円 | 就業不能1日につき5,000円 |
年間保険料 | 7,700円 | 11,700円 |
シンプルですよね。年間保険料は性別・年齢によって変わりません。一律です。
ここで他社と比較してみます。比較対象はアクサ生命「アクサのネット完結働けないときの安心」。現在の就業不能保険のスタンダードです。
アクサ生命 | はたらく力 | ||
保障条件 | ①治療を目的とした入院 ②医師の指示による在宅療養 ③障害等級2級以上 |
①治療を目的とした入院 ②医師の指示による在宅療養 |
|
メンタル疾患の保障条件 | ①治療を目的とした入院 ②障害等級2級以上 ※月10万円を最大18回(18ヶ月)給付 |
ー | |
その他の条件 | ・月10万円保障(ハーフタイプ) ・保障期間60歳まで ・免責期間60日 |
・1日3千円保障(3000コース) ・給付日数265日限度 ・免責期間0日 |
|
月額保険料 | 30歳男性 | 1,670円 | 642円 (年間7,700円) |
30歳女性 | 1,380円 | ||
40歳男性 | 2,000円 | ||
40歳女性 | 1,710円 |
入院・在宅療養が保障されるのは両社同じ。アクサ生命は障害等級も保障条件に含まれるので、障害を負うような状態になっても長期間(上表のケースだと60歳まで)給付を受けられる点が大きな違いです。
また、アクサ生命はメンタル疾患も保障対象です。この点はプレッシャーがきつい働く世代には安心ですが、保障対象となるのは入院が必要だったり障害等級認定されるような重症です。よくある
「ちょっと会社を休んで通院しながら治療」
は保障対象となりません。まあそれでもハマったらなかなか抜け出せないメンタル疾患が保障対象である点はメリットでしょう。
給付期間にも大きな違いがあります。
- パルシステムは7日以上の入院・在宅療養で給付スタート。給付されるのは最長265日(3000コース)。
- アクサ生命は入院・在宅療養が60日を超えたら給付スタート。給付は60歳まで続く。
繰り返しますがパルシステム「はたらく力」が保障するのは短期の働けないリスクです。保障は早くスタートしますが、給付日数は265日間(3000コース)が限度なので、それを超えても働けないような本当に悲惨な状況でも保障が途切れます。
一方で、アクサ生命はスタートは遅い(免責60日)ものの、給付は長期間に及びます。上表のケースであれば、条件を満たす限りは60歳まで給付が続きます。
保険料は圧倒的にパルシステム「はたらく力」が安くなってますが、保障内容の違いを加味すればまあこんなものかと感じます。保障内容なりの保険料だと。
会社員には傷病手当金が最長1年6ヶ月(540日間)が給付されるので、この期間であれば貯蓄の切り崩しで持ちこたえられる方も多いでしょう。たとえ保険料が激安だったとしても、あえてパルシステム「はたらく力」に加入することもないかなとは感じます。
誰でも加入できる。
職業による加入制限はありません。唯一の加入制限は年齢(18歳~64歳)だけ。持病がある場合でも加入できます(ただし条件付きになる可能性あり)し、収入のない主婦・主夫の方ももちろん加入できます。
ただし、パルシステム「はたらく力」に申し込むにはパルシステムへの会員登録が必要です。パルシステムはそもそもが宅配サービスなのですが、日本全国に展開しているわけではありません。
2021年3月現在の展開エリアは下記のとおりです。
サービス対象エリア:東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、福島、山梨、長野、静岡、新潟
上記以外の地域にお住まいの方はパルシステムに会員登録できない可能性があります。この点は注意ですね。
免責期間なし。
パルシステム「はたらく力」は入院・在宅療養が7日間続いたら給付開始です。
他社だと免責期間60日といった制限があり、入院・在宅療養が60日を超えないと給付が開始されないことが多いのですが、パルシステムに免責期間はありません。この点はパルシステムのメリットでしょう。
さらに、給付額は働けなくなった日にさかのぼって計算されます。ちょっとケース分けすると、
働けない日が6日間続いた⇒給付なし。
働けない日が7日間続いた⇒7日分の給付金を受け取れる。
働けない日が8日間続いた⇒8日分の給付金を受け取れる。
です。これはとても良心的。
パルシステム「はたらく力」のデメリット
冒頭に書きましたが、メンタル疾患は保障対象外です。まあ他社の就業不能保険も入院や障害等級認定されるような重症を保障対象とすることが多いのですが、この点はやや注意でしょう。
また、年間給付日数に上限があるため、長期の働けないリスクに備えられる保険ではありません。
3000コース:年間265日まで保障。
5000コース:年間160日まで保障。
パルシステム「はたらく力」の引受保険会社(LASHIC少額短期保険株式会社)が少額短期保険会社なので、支払うことができる保険金の上限が法律で決まってます。その額が80万円。
3000コースは1日3,000円保障なので、給付日数の上限は265日(800,000円÷3,000円)。同様に5000コースは160日です(800,000円÷5,000円)。大きなケガや病気で給付日数の上限を超えた場合、保険金の支払いはもちろんストップです。
さらに、給付金額の上限は通算にも適用されます。給付金額が通算で80万円を超えた場合は契約更新できません。パルシステム「はたらく力」は保険期間が1年で毎年更新していくのですが、給付された金額の合計が80万円を超えると翌年の更新はできなくなります。契約更新時にゼロクリアされるわけではありません。
例えば、1年目で30万円給付、2年目に50万円給付された場合、以降はパルシステム「はたらく力」に一生涯加入できません。
といったように、法律で決められた保障額上限があるために、いろいろな制限が生まれてしまう点は総じてデメリットでしょう。
パルシステム「はたらく力」の評価
評価:B(S、A~C)
保険料の安さが魅力ですが、原則的には短期の働けないリスクに備える保険です。ある程度の貯蓄があって、傷病手当金も給付される会社員の方であれば、あえて加入する必要もないかなというのが率直な印象です。
一方で、傷病手当金が給付されない個人事業主・フリーランスの方には傷病手当金代わりとなる保険でしょう。また、まだまだ貯蓄が少ない(そして収入も少ない)新社会人の方にとっても保険料の安さは魅力的かと。
よって、評価は「B」が妥当かと感じます。使い方が選ばれる保険ですね。
長期間の働けないリスクに備えるのなら、現状はアクサ生命「アクサのネット完結働けないときの安心」もしくは、ライフネット生命「働く人への保険3」あたりが良いです。こちらも検討対象に含めてみてください。
生命保険各社の就業不能保険は↓で比較してますので、こちらもご参考に。
パルシステム「はたらく力」に申し込むなら。
パルシステム「はたらく力」はパルシステム公式サイト、もしくは生協窓口から資料請求ができます。
公式サイト:パルシステム「はたらく力」
資料請求後、生協組合に会員に登録してから「はたらく力」の申し込みです。生協組合の会員になるには出資金として500円~1,000円程度支払う必要があります。ただし「出資金」なので、会員を脱退すると戻ってきます。
長期の働けなくなるリスクに備えたい場合は、一度専門家へ相談してみましょう。保険クリニックなら、この記事でご紹介したアクサ生命と提携しています。
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1点目は保険を契約する際に生命保険会社へ知らせた告知事項(過去の病歴とか現在の健康状況とか職業等)に誤りがあったケースで、これは保険ショップのスタッフが契約時にしっかり説明すれば回避できます。保険クリニックでしっかり説明を受けて契約すれば、まず該当することはないかと。
また、2点目はそもそも保険会社に保険金を支払う責任がないケースですが、医療保険やがん保険や就業不能保険には責任分界点が微妙なグレーゾーンが存在します。微妙なグレーゾーンでキーになるのが医師が書く診断書。診断書の表現ひとつで保障されないこともあります。
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生命保険の相談は気軽な気持ちで。重く考える必要はありません!
まとめ
公式サイト:パルシステム「はたらく力」
傷病手当金が給付されない自営業・フリーランスの方に最適な就業不能保険です。短期間の働けなくなるリスクに備えるには十分な保障内容になっています。
そして保険料は激安。まだまだ収入が少ない新社会人の方でも
「働けなくなるの怖いからとりあえず入っておくかー」
くらいの軽い気持ちで入れる保険料です。
しかし、給付日数に限度があるため、長期間の働けなくなるリスクに備えるには不十分です。本気で働けなくなるリスクに備えるなら、他社の就業不能保険も検討しておいた方がよいでしょう。パルシステム「はたらく力」だけでは若干心細いかと。
就業不能保険を検討する際には、必ず一度は専門家に相談してみましょう。保険クリニックなら、この記事でご紹介したアクサ生命と提携しています。就業不能保険を比較してもらうなら、保険クリニックが手っ取り早いです。
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※2023年2月更新