三大疾病保険の選び方

三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)に罹り、所定の条件を満たせばポンっと100万円といった一時金保障を受けられる三大疾病保険。

ケガや病気をオールラウンドに備えられるのが医療保険ですが、医療保険はやや保険料が高め。がん保険は保険料が比較的安く収まるものの、がん以外は保障されません。

その医療保険とがん保険の中間にあるのが三大疾病保険です。

よく知られていることですが、令和3年の厚生労働省調査(PDF)によると、日本人の死因は

No.1 悪性新生物 26.5%
No.2 心疾患 14.9%
No.3 老衰 10.6%
No.4 脳血管疾患 7.3%

だそうなので、どうしようもない老衰を除けば三大疾病が上位を占めます。しっかりとしたデータがないので個人的な感覚にはなりますが、現役世代が働けなくなる原因の多くもがんと脳血管疾患が占めるかなと(それとメンタル疾患)。

その三大疾病に限定して保障するのが三大疾病保険です。日本人が罹りやすい(そして重症化しやすい)病気の大半をカバーしていて、それでいて保険料は医療保険より安め。コスパのよい保険です。

最近は生命保険各社が三大疾病保険を発売していますが、その保障内容はピンキリです。保険料にも違いがあります。ハズレの三大疾病保険に加入してしまうと

「え…」

と、いざというときに絶句することもあり得ます。

この記事では、そんなハズレを引かないために三大疾病保険の選び方について書いています。ざっくり言うと、ポイントは以下の3点。

  • 心疾患・脳血管疾患の保障範囲
  • 一時金の給付条件
  • 月々の保険料

ちなみにですが、三大疾病保険には

①三大疾病で所定の条件を満たした場合に一時金を給付するタイプ
②死亡保障に三大疾病が加わったタイプ

の2種類があります。

①はわかりやすいです。がんと診断されたり、心疾患・脳血管疾患で入院したり手術を受ければポンっと100万円とかが銀行口座に振り込まれます。

②はベースの死亡保障に三大疾病の保障が追加されたもの。亡くなる前に三大疾病で所定の条件を満たせば、前倒しで保険金を支払うというタイプです。

①と②のどちらが良いかは後述しています。

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【三大疾病保険の選び方①】心疾患・脳血管疾患の保障範囲

ちょっと古い三大疾病保険だと、心疾患・脳血管疾患の保障範囲が

急性心筋梗塞・脳卒中

に限定されることがあります。

急性心筋梗塞は心疾患の一部です。保障対象が急性心筋梗塞に限定されると、急性心筋梗塞以外の心疾患が保障対象外になってしまいます。平成29年の厚生労働省の調査によると心疾患全体の患者数1,732千人のうち、急性心筋梗塞の患者数は47千人。割合にすると2.7%。

保障対象が急性心筋梗塞に限定されてしまうと、その他の心疾患(狭心症・不整脈・心筋症等)は保障対象外です。

また、脳卒中も脳血管疾患の一部ですが、脳卒中には

  • 脳梗塞
  • くも膜下出血
  • 脳出血

が含まれます。平成29年の厚生労働省の調査によると脳血管疾患の患者数1,115千人のうち、脳梗塞・くも膜下出血・脳出血の患者数合計は973千人。割合にすると87.2%です。

ということで、保障対象が脳血管疾患でも脳卒中でもそれほど差はありません。まあ脳血管疾患の方がちょっと安心かな、くらいです。

ちょっと前までは急性心筋梗塞・脳卒中に限定されると保険料が安かったりしたのですが、最近は心疾患・脳血管疾患でもだいぶ安くおさまるようになりました。現状であれば、選ぶべきは心臓と脳の疾病を丸ごと保障する三大疾病保険です。

【三大疾病保険の選び方②】一時金の給付条件

三大疾病保険はがん・心疾患・脳血管疾患で所定の条件を満たした場合に一時金を支払う保険なのですが、一時金を支払う条件が各社異なります。支払い条件が厳しい三大疾病保険を選んでしまうと

「がんで苦しんでるのに一時金払ってくれないじゃん!」

ということもあります。

そんなことにならないためのポイントは以下の3点。

  • がんの2回目以降の給付条件に通院治療が含まれること。
  • 1年に1回、回数無制限給付であること。
  • 心疾患・脳血管疾患の給付条件が入院即給付であること。

がんの1回目給付条件はどこも同じです。

「あなたはがんです」

と医師に診断されれば一時金が給付されます。

違いがでるのが2回目以降の給付条件。2回目以降の給付条件が入院に限定されることがあるのですが、これだと通院治療のみ受けている場合は一時金が給付されません。

最近の医療は入院から通院にシフトしています(医療費を抑えるための国策)。がんの3大治療は手術・放射線治療・抗がん剤と言われていますが、放射線治療は通院で受けることが大半ですし、抗がん剤も通院で打つケースが増えています。入院に限定されると、がんの治療が続いて苦しんでるのに一時金給付されないこともあるでしょう。

がんの2回目以降の給付条件は

「入院or通院」

もしくは

「がんの3大治療(手術・抗がん剤・放射線)を受けていること」

がベター。

さらに最近は2回目以降も診断確定が条件に含まれることがあります。これなら

「がんが再発したみたいですね」「がんが転移したみたいですね」

と診断されれば一時金給付。将来的にがんの3大治療に次ぐ4番目・5番目の治療方法が開発され、それを受ける場合でも一時金を受け取れるでしょう。診断が条件に含まれると治療方法に関わらず一時金給付されるので、汎用性が一気に高くなります。これがベスト。

また、給付間隔・給付回数は

「1年に1回、回数無制限」

が良いです。

ちょっと古い三大疾病保険だと給付間隔が2年に1回ということもあります。がんも心疾患も脳血管疾患も2年以内に再発することが珍しくありませんが、再発して苦しんでるのに

「あ、前回から2年経過してないので一時金お支払いできませんよ」

と、言われたらイラっときます。

がん・心疾患・脳血管疾患は初回よりも再発したほうが症状は重くなりがちです。給付間隔が1年に1回の三大疾病保険を選びましょう。

また、給付回数に5回とか10回とか制限がある三大疾病保険もあります。

まあ一生涯で5回も10回も一時金を受け取ることは稀ですが、長期闘病となる可能性を踏まえれば安心なのは回数無制限です。

最後に、心疾患・脳血管疾患の給付条件が

「手術、または20日以上の継続入院」

だとか

「60日以上の労働制限・後遺障害継続」

となっていることがあります。

生命保険文化センターによると、心疾患の入院日数平均は24.6日、35~64歳だと12.6日。例えば狭心症だと入院は2~3日程度。手術を受けずに薬剤治療だけで退院となることも多いので、↑が条件だと一時金は給付されません。

一方で、脳血管疾患は入院が長引きます。脳血管疾患の入院日数平均は77.4日、35~64歳だと51.8日。↑の条件でも一時金給付されることが多いのですが、それでも

「手術、または入院」

といったように、入院即保障が手厚い三大疾病保険。

選ぶなら、入院即保障の三大疾病保険です。

【三大疾病保険の選び方③】月々の保険料

当たり前のことですが、月々の保険料はしっかり比較しましょう。

契約者が支払う保険料は

  • 純保険料…お客さんに支払う保険金の原資
  • 付加保険料…保険会社の経費等

に分解できるのですが、純保険料はどこの生命保険会社も同じです(A社よりB社のほうががんに罹る人が多いということはあり得ない)。

違いが出るのが付加保険料。ここは生命保険会社の経営努力によって変わります。傾向的には社名に漢字が並ぶ歴史ある生命保険会社は付加保険料が高めです(全国の支店網とか営業職員を雇い続けるのに経費がかかる)。

最近設立されたカタカナやひらがなが社名の生命保険会社のほうが身軽なので、保険料は安く収まることが多いです。

特定疾病保障保険はお得なのか。

冒頭書いたとおり、三大疾病保険には

①三大疾病で所定の条件を満たした場合に一時金を給付するタイプ
②死亡保障に三大疾病が加わったタイプ

の大きく2種類があります。

②は特定疾病保障保険と呼ばれるのですが、特定疾病保障保険は三大疾病で所定の条件を満たした場合に前倒しで保険金を受け取れます。例えば、30歳で契約して40歳でがんと診断されれば40歳時点で保険金が支払われて契約終了(その後に亡くなっても保険金は受け取れない)。三大疾病に罹ることなく亡くなれば、亡くなったときに保険金を受け取れます。

①と②のどちらが有利なのか、一概には言えないのですが、ここで両者を比較してみたいと思います。比較対象は三大疾病を一時金で保障するメディケア生命「新メディフィットPlus(プラス)」と、特定疾病保障保険の代表格であるオリックス生命「With(ウィズ)」とします。

保障内容を比較する

まずは両者の保障内容を比較してみます。

オリックス生命
「With」
メディケア生命
「新メディフィットPlus(Ⅱ型)」
死亡保障 あり なし
高度障害 あり なし
がん がんと診断確定(上皮内がん含まず) 1回目:がんと診断
2回目以降:がんと診断(転移・再発)、がんで入院or通院or緩和ケア
心疾患 急性心筋梗塞に限定
60日以上の労働の制限or手術
心疾患をまるごと保障
入院or手術
脳血管疾患 脳卒中に限定
60日以上の神経学的後遺症or手術
脳血管疾患をまるごと保障
入院or手術
解約返戻金 あり なし

死亡・高度障害が保障されるのはWithのみ。新メディフィットPlusはシンプルに三大疾病のみを保障です。

その三大疾病の保障条件は新メディフィットPlusの方が優勢です。

がんは両者ほぼ同じですが、上皮内がんを保障する新メディフィットPlusの方が保障範囲はやや広め。上皮内がんとはがん細胞が血管やリンパ管に達していない初期のがんで、スパッと手術で切り取れれば転移や再発する可能性が低いと言われています。

まあ上皮内がん程度で経済的に困窮することはないと思いますが、乳がんは上皮内がんでも通常のがんと同程度の治療を受けることがあります。女性は要注意です。

また、Withが保障する心臓・脳の疾病は急性心筋梗塞・脳卒中に限定されています。心疾患・脳血管疾患を保障する新メディフィットPlusの保障範囲は広いです。

さらに、Withは保障条件が

60日以上の〇〇or手術

なので、入院即保障の新メディフィットPlusよりも条件は厳しめ。Withも条件に手術が入っているので、急性心筋梗塞・脳卒中で倒れたのに保障されないということは少ないと思いますが、それでも条件が緩いのは新メディフィットPlusです。

保険料を比較する。

続いて30歳男性を例に月々の保険料を比較してみます。

60歳までに保険料を払い終える前提で、Withの保険金額を300万円、新メディフィットPlusの保険金額を100万円とした場合の月々の保険料は以下のとおり。

With:7,776円(保険金額300万円・60歳払済)
新メディフィットPlus:4,960円(保険金額100万円・60歳払済)

保険金額に違いを設けているのは、Withは保険金を1回支払ったら契約終了するのに対し、新メディフィットPlusは条件を満たす限り、一時金が回数無制限(1年に1回間隔)で給付されるため。「300万円 VS 100万円」に明確な根拠はありませんが、以降はこの点も加味して比較していきます。

①一生涯で三大疾病に罹ることなく亡くなった場合

Withには死亡保障があるので300万円ゲット。それに対して新メディフィットPlusには死亡保障がないので何も受け取れません。ということで、このケースはWithの大勝。

日本人の2人に1人ががんに罹患すると言われてますし、冒頭書いたとおり日本人の死因は

No.1 悪性新生物 26.5%
No.2 心疾患 14.9%
No.3 老衰 10.6%
No.4 脳血管疾患 7.3%

なので、心疾患+脳血管疾患で22.2%。ものすごいざっくりした計算にはなりますが、概ね4人に1人くらいがこのケースにあてはまるかなと。

②60歳以降に三大疾病に罹り、そして亡くなった場合

最もよくあるのがこのケース。現役時代は無事にやり過ごせて、引退後に三大疾病で亡くなったといったケースです。

このケースだと満期を迎える60歳まで保険料を支払い続けるので、各々の保険料総額は↓。

With:7,776円×12ヶ月×30年=2,799,360円
新メディフィットPlus:4,960円×12ヶ月×30年=1,785,600円

これでWithは300万円ゲットなので、Withの利益は↓。

3,000,000円-2,799,360円=200,640円

一方で、上述のとおり新メディフィットPlusで条件を満たす限り一時金100万円を複数回受け取れます。

三大疾病発症から間もなく亡くなってしまい、一時金100万円を1回しか受け取れなかった!といった場合だと、

1,000,000円-1,785,600円=-785,600円

なのでけっこうな赤字。

闘病が1年以上続いた、あるいは初回は頑張れたけど数年後に再発して亡くなってしまった!といったケースで一時金100万円が2回支払われると

2,000,000円-1,785,600円=214,400円

ということで、Withよりも利益が出ます。一時金を2回以上受け取れれば新メディフィットPlusの勝ちですね。

しっかりしたデータがないので断定的なことは言えませんが、60歳を超えてもがんの闘病が1年以上続くことは珍しくありません。このケースは両者引き分けくらいかなと。

③60歳までに三大疾病に罹り、61歳以降に亡くなった場合

保険が大きな意味を持つケースです。若くしてがんに罹ったものの、無事に寛解して社会復帰。そして引退後に亡くなったといったケースです。

Withは三大疾病に罹ったタイミングで300万円を受け取り、保険料の支払いも終了です(契約終了)。一方で、新メディフィットPlusは満期を迎える60歳まで保険料を払い続けるので、上述のとおり、支払った保険料総額は1,785,600円。

仮に40歳でがんと診断された場合、それまでにWithの支払った保険料総額は↓。

With:7,776円×12ヶ月×10年=933,120円

これで300万円ゲットなので、利益は↓。

3,000,000円-933,120円=2,066,880円

新メディフィットPlusで200万円以上の利益を出すためには、亡くなるまでに一時金を4回以上受け取る必要があります。なかなかの長期闘病です。

このケースはWithがお得になることが多いかなと。

④60歳までに三大疾病に罹って亡くなった場合

このケースも保険が大きな意味を持ちます。若くしてがんに罹り、不幸にも亡くなってしまったケースです。

繰り返しますが、Withは三大疾病に罹ったタイミングで300万円を受け取り、保険料の支払いも終了です。一方で、新メディフィットPlusは亡くなるまで保険料を払い続け、そして闘病期間中は1年に1回間隔で一時金を受け取れます。

例えば、40歳でがんと診断されて1年間闘病し、残念ながら41歳で亡くなった場合の支払った保険料総額は

With:7,776円×12ヶ月×10年=933,120円
新メディフィットPlus:4,960円×12ヶ月×11年=654,720円

これでWithは300万円ゲットなので、損得は↓。

3,000,000円-933,120円=2,066,880円

新メディフィットPlusは条件を満たす限り1年に1回100万円です。40歳から41歳まで闘病していれば一時金を2回受け取れるので、

2,000,000円-654,720円=1,345,280円

ということで、Withの勝利。

しかし、闘病が2年続いた(一時金を3回受け取れた)場合は支払った保険料総額

4,960円×12ヶ月×12年=714,240円

に対して300万円を受け取れるので、

3,000,000円-714,240円=2,285,760円

ということで、新メディフィットPlusの勝利。

三大疾病に罹った時期が若いほどWithが有利ですが、闘病が長引けば新メディフィットPlusが逆転するといった構図です。

⑤老後に備える場合

新メディフィットPlusは掛け捨てです。支払った保険料は戻ってきません。

一方で、Withには解約返戻金があります。満期(このケースだと60歳)を迎えた後に解約すれば、解約返戻金として支払った保険料に利息がちょっぴり上乗せされて戻ってきます。現時点だとこの利息が2%程度(年利ではありません)。なので支払った保険料総額

7,776円×12ヶ月×30年=2,799,360円

がほぼそのまま戻ってきます。

ということで、このケースもWithが大勝。

ちなみに、満期を迎える前に解約しても支払った保険料の7割程度が戻ってきます。

まとめ

相対的に見て、各々の良い点をまとめておきます。

【Withの良い点】
・亡くなった場合も保障される。
・満期を迎えた後に解約すれば、支払った保険料がほぼそのまま戻ってくる。
・三大疾病に罹った時期(もしくは亡くなった時期)が早ければ早いほどお得。

【新メディフィットPlusの良い点】
・保険料が安い。
・心疾患・脳血管疾患の保障条件が良い。
・闘病が長引いた場合に強い(一時金を複数回受け取れる)。

月々の保険料を支払える余裕があるのなら、Withの方が良いかなとは感じます。保険料は高めですが、最終的には支払った保険料が戻ってくるので、貯蓄と思って貯めるのもアリです(利息はほぼありませんが…)。三大疾病に備えることも重要ですが、三大疾病に罹らなかったときのことも考えればWithの方が有利。

一方で、新メディフィットPlusは安い保険料で三大疾病に備えられます。心疾患・脳血管疾患の保障条件も良いですし、地獄の長期闘病になった場合はWithよりも有利になる可能性があります。

比較した例では条件を合わせるために新メディフィットPlusを60歳払済としましたが、保険料を終身払(一生涯払い続ける)にすれば同条件の保険料は月2,820円。ググっと安くなります。

年金暮らしとなれば三大疾病で入院しても収入が途切れることはないですし、医療費の自己負担割合もググっと下がるので、保険の必要性は低下します。しっかりお金を貯めていれば、いつか保険が不要となる日も来るでしょう。終身払なら、

「保険はもう卒業!」

と思ったら躊躇なく解約できます。

まあここらへんは個人の価値観による(掛け捨てはもったいない!とか)ので、冒頭書いたとおり一概には言えないのですが、教育費用や住宅費用で出費がかさむ家計なら、新メディフィットPlusの終身払で十分とは感じます。

【三大疾病保険の選び方 おまけ】オプションの種類

余裕があれば付加しておいたほうが安心なオプション(特約)を2つ挙げておきます。

①先進医療特約

先進医療とは、厚生労働省が指定した公的医療保険の対象にするかを評価する段階にある治療・手術を指します。健康保険が適用されないので治療費は全額自己負担。なので、先進医療を受けると高額な医療費を請求されることもありますが、その医療費実費を保障してくれるのが先進医療特約です。

先進医療には、例えばこんなのがあります。

陽子線治療:2,649,978円
重粒子線治療:3,186,609円
(参考:生命保険文化センター

重粒子線治療は放射線治療の一部で、がん細胞に対する効果が通常の放射線治療の2~3倍ほど高く、治療期間も短くすることができると言われています。

重粒子線治療はその効果が認められ、保険適用となる疾患が順次拡大されています。2016年には小児がん、2018年には前立腺がんと頭頚部がん、そして2022年4月には肝細胞がん(長径4㎝以上)・肝内胆管がん・膵がん・大腸がんの骨盤内再発・子宮がんに保険が適用されるようになりました。

しかし、それ以外のがん治療に用いる場合はまだ先進医療扱い。治療費約318万円が全額自己負担です。

先進医療には↑で挙げた陽子線治療や重粒子線治療の他にも82種類の治療があります(2022年8月1日現在)。先進医療特約を付加しておけば、保険適用を待つこともなく、

「(医療保険で治療費実費が保障されるので)受けます!」

と、即断できます。保険適用を待ってる間に手遅れになってしまった!なんていう最悪の事態を避けられます。

治療費全額負担とか言われるとものすごい特約保険料が高そうに思えますが、先進医療特約を付加しても保険料はそんなに上がりません。月額100円程度の保険料で付加できます。先進医療特約は医療保険に加入した人の90%以上が付加しているというデータもあり、なかなか人気のある特約です。

②抗がん剤治療特約

がんもがん細胞を手術で切り取れれば怖くありません。入院して手術して、1ヶ月程度で職場復帰できることも不可能ではないでしょう。

本当に怖いのは手術で切り取ることができず、抗がん剤でがん細胞を叩き潰すケースです。この場合は副作用が辛くて満足に働くことも難しく、銀行口座の残高が徐々に減っていく抗がん剤ドロ沼にハマります。

ベッドの上で虚空を見上げながら

「あ、これ、やばいかも…」

と、メンタルを削られまくるのがこのケース。

三大疾病保険にはこんな抗がん剤治療を保障するオプションを付加できることがあります。抗がん剤治療を受けた月に10万円といった金額を銀行口座へ振り込んでくれるので、これなら経済的な不安も和らぐかと。

また、最近は自由診療の抗がん剤治療も保障するオプションが発売されています。

「欧米では承認されて使用が進んでいるけど、日本では承認が遅れている抗がん剤」

が自由診療の抗がん剤。もちろん日本未承認の抗がん剤治療には健康保険が適用されません。

こんな抗がん剤治療を受けることになると、

  1. 製薬会社の治験
  2. 先進医療
  3. 患者申出療養
  4. 自由診療

のどれかを選択することになります。

運良く治験を受けられれば薬剤費は無料。その他の医療費も健康保険が適用されるので、医療費はググっと抑えられます。

2の先進医療は厚生労働省によって指定された健康保険の対象にするかを評価する段階にある治療・手術を指します。先進医療には健康保険が適用されません。混合医療なので診察料・入院料といった技術料以外の医療費は健康保険が適用されるものの、先進医療の技術料は全額自己負担です。

3の患者申出療養は患者が国に

「未承認の抗がん剤だけど、他に手段がないので受けさせてください!」

と申請する制度です。

申請が認められれば先進医療と同じく診察料・入院料といった技術料以外の医療費は健康保険が適用されますが、こちらも技術料は全額自己負担。

この2と3のケースは民間の保険で救うことができます。上述した先進医療特約が2を保障対象としていますし、最近の進化した先進医療特約だと3まで保障することもあります。

ただし、先進医療と患者申出療養はまだまだ黎明期です。令和3年に先進医療を受けた方は5,843人ですし、患者申出療養は令和2年7月1日から令和3年6月30日までの1年間で208人(参考:厚生労働省)。

実際は4の自由診療で受けるケースが多いでしょう。

自由診療は先進医療・患者申出療養とは異なり、治療費全額が自己負担です。本来であれば健康保険が適用されて3割負担となる診察料・入院料といった費用も10割負担。もちろん高額療養費制度も利用できないので、治療費は青天井に膨らみます。

自腹で支払うと毎月100万円を超えることもあるのが自由診療。一般庶民に手が届く治療ではありませんが、最近の民間の保険は

  • 自由診療の抗がん剤治療を受けた月に20万円給付。
  • 自由診療の抗がん剤治療の治療費実費を上限3,000万円まで保障。

といったオプションを備えていることもあります。

まあでも自由診療を受けるかどうかはその人の価値観に大きく左右されます。

「最悪のケースは自由診療を受けることも辞さない!」

という方なら、自由診療の抗がん剤治療を保障対象としているかは重要でしょう。

一方で、

「自由診療なんて効果があるかはっきりしないんでしょ?健康保険が適用される治療で助からないならそれも運命」

という考え方もあります。こういう考え方であれば、健康保険が適用される範囲までを保障する抗がん剤治療特約で十分でしょう(土壇場になると後悔することもありますが…)。

ちなみに、メディケア生命が実施したアンケートでは抗がん剤治療を受けた方のうち、自由診療を受けた方の割合は18.9%だそうです(厚生労働省では集計してないっぽい)。

【補足】

三大疾病保険には

①三大疾病で所定の条件を満たした場合に一時金を給付するタイプ
②死亡保障に三大疾病が加わったタイプ(特定疾病保障保険)

があると書きましたが、②の特定疾病保障保険は上記2つのオプションを付加できないことが多いです。

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また、2点目はそもそも保険会社に保険金を支払う責任がないケースですが、医療保険やがん保険や三大疾病保険には責任分界点が微妙なグレーゾーンが存在します。微妙なグレーゾーンでキーになるのが医師が書く診断書。診断書の表現ひとつで保障されないこともあります。

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まとめ 三大疾病保険の選び方3つのポイント。

三大疾病保険を選ぶポイントは以下の3点です。

  1. 心疾患・脳血管疾患の保障範囲:急性心筋梗塞・脳卒中に限定せず、心疾患・脳血管疾患をまるごと保障するタイプが良い。
  2. 一時金の給付条件:1年に1回、回数無制限給付。がんの2回目以降の給付条件は入院に限定してなくて、心疾患・脳血管疾患は入院即保障が良い。
  3. 月々の保険料:少しでも安い保険を選びましょう。

あとは、余裕があれば先進医療特約・抗がん剤治療特約を付加するかを検討です。先進医療特約は特約保険料も安いので、付加しておいたほうが安心かなと。

三大疾病保険は保険ショップで無料相談できます。相談したその場では契約せず、一度自宅に持ち帰って冷静に考えてからにしましょう。三大疾病保険は買い逃した!ってことはほぼありません。冷静に、落ち着いて。

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